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頭頸部がんってご存知でしょうか。

頭から頸(くび)にかけての範囲に発生するがんで、耳鼻咽喉・頭頸部外科の守備範囲です。舌がんや喉頭がん、咽頭がんなどが頭頸部がんの代表で、眼球と脳のがんは除きます。

舌がんや咽頭がんは、小さなものでは内視鏡下切除や局所切除で完治可能です。入院も3日~10日もあれば十分です。

次の写真は喉頭がんの初期です。内視鏡で切除を行い、二泊三日の入院期間で治療を完了しました。声は嗄れず、再発もありません。

舌がんも小さなものでは局所の切除のみで治療可能です。下の写真は舌の部分切除で、一週間の入院期間で治療を終えて、障害はなく再発はありません。

しかし、局所切除では治らないくらいに進行すると、喉頭を含めて切除をしたり、放射線治療と抗癌剤の組み合わせで治療を行うことになります。

放射線治療は、切らなくてよい治療とはいわれますが、実際は過酷な治療で、治療中に口やのどの粘膜・皮膚はズルズルに剥けてしまい、激しい痛みに見舞われます。

治った場合も、治療後は下顎骨壊死や唾液腺障害、甲状腺機能障害などの後遺症に悩まされます。

治療後10年経ったころからは、放射線による発癌や誤嚥(食べ物などが誤って気管に入ってしまうこと)が生じることがあります。嚥下(えんげ、飲み込むこと)関連する筋肉が硬くなる(拘縮)ことによって、飲み込みがうまくいかなくなるのです。がんで命を落とすことはなくても、誤嚥性肺炎で亡くなることがありうるのです。

さらに進行した癌となった場合は、拡大切除+再建(組織移植)が必要となります。チーム医療を行って、頑張って治すように努力をしますが、それでも機能障害は大変なものです。進行具合によっては、さらに放射線治療をすることもあり、たいへんです。

こうならないためには、どうすればいいのでしょうか。

内視鏡切除や局所切除が可能なくらいに、早期で発見できればいいのです。

そのためには、頭頸部がんの原因を知り、ハイリスク(高危険度)の方が早めにしかるべき検査を受ければよいのです。

 

では、その頭頸部がんのリスクにはどんなものがあるのでしょうか。

まず、代表的なものにアルコールがあります。

アルコールは、肝臓で酵素によって分解されますが、酵素が少ない方では分解が不十分となり、アセトアルデヒドという物質がつくられます。このアセトアルデヒドが口腔や咽頭、食道の粘膜に影響を与えて発癌するのです。

アセトアルデヒドは顔の血管を拡張して顔を赤くしますから、アルコールを飲んで顔が赤くなる方は酵素が足りないのです。このような人をフラッシャーと呼びます。日本人の90%がフラッシャーです。

写真は今年の沖縄年越しセルフダイバーの海底奉行御一行です。男性4人のうち、三人がフラッシャーです。(写真は東京の小澤道菜さんのFBからいただきました。)

アルコールの次に目立つ原因はタバコです。タバコの不完全燃焼によって生じる物質とタールがあります。

アイコスのような電子タバコはどうでしょうか?噛みタバコ人口の多いミャンマーでは、舌がんなどの口腔がんが癌の死亡率の上位を占めていますから、アイコスのような電子タバコでも発がんは免れないことがわかります。

タバコは喉頭や肺がんのリスクとなります。

飲酒と喫煙が重なると、発癌性はさらにあがります。

写真左下は進行した下咽頭がん、中は正常の咽頭・喉頭、右は喉頭がんです。

そのほかには口腔内の不衛生は歯肉がんのリスクになります。

写真下は上歯肉癌です。

歯並びが悪いと舌を傷つけて舌がんが生じやすいといわれます。20代前半でも舌がんは生じますが、原因は歯の刺激が最も多いと思います。写真は舌がん。

また、子宮頸がんで有名なパピローマウィルスは咽頭がんのリスクにもなります。性感染症が発癌にかかわるのです。写真は中咽頭がん(扁桃に生じた癌です)

女性の慢性貧血が下咽頭がんのリスクになることがあります。

また、慢性副鼻腔炎(蓄のう症)は上顎がんなどの副鼻腔がんの発生母地といわれています。実際に上顎がんになっている方は、皆さん副鼻腔炎があります。副鼻腔炎は治しておきましょうね。写真下は上顎がんの方のCTです。骨が破壊されています。

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