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執筆者の写真Tomoo Onoda

バー浜セルフ ヨット乞食


大学生のとき、ヨット部に入った。

ヨット、そう、青い海に白いセール(帆)をあげて海原を走るあれである。

まあ、なんて華やかな。

しかし、自分の入ったヨット部のセールは白くなかった。黄ばんでいて、ところどころに茶色い染みがあった。ほころびはガムテープで直してあった。

使い込まれたライフジャケットは、レンガ色がくすんで薄いオレンジ色になり、ぺちゃんこに潰れた胴体部分にはマジックで、医大、と殴り書かれていた。ちゃんと、浮くのかな?

船を保管する艇庫はなく、船体は浜の高台に裏返しで置いてあったが、台風が来ると波にさらわれそうになった。

とてもじゃないが、海原の白い優雅なヨットの印象はなく、地元の漁師は、俺たちをヨット乞食と呼んでいた。ヨット乞食は車に乗り合わせて浜に通った。

ヨットは動力が風なので燃料は不要だ。安上りである。

どうやって進むかなど、ヨットの理論は黒木先輩から学んだ。

ヨットは風を受けて進むんだけど、風に逆らって風上に進めるんだよ。

なぜか、わかる?

揚力だよ。

飛行機が空を飛ぶのと同じなんだ。

日本人なのに、ジョンレノンに似た黒木先輩は、長崎の五島列島出身なのに、きれいな言葉を話します。

解説は続きます。

物質は濃い方から薄い方へ流れようとするよね。空気も濃い方から薄い方へ流れる。気圧が高い方から薄い方に流れようとする。

飛行機の翼は上に突の曲面をつくっているよね。

滑走路を走ると翼の下には風が溜まって気圧が高くなる。翼の上は風が通り抜けて気圧が低くなる。

空気は気圧が高い方から低い方に流れようとするから、その力に翼が引っ張られて飛行機は浮き上がる。これが揚力なんだ。

ヨットの場合も同じだよ。風に向かって45度までは帆が膨らませて空気を流すことができるんだ。

揚力は船の方向よりも横に向かっているから、そこはセンターボードで横流れを防ぐんだ。

これがヨットのセンターボードです。

ヨットは動力が風なので、運転をするのに免許がいりません。

かくしてヨット乞食は、沖でセールを緩め、晩御飯を狙って釣り糸を垂らしたりなどして過ごしていました。

ヨットマンとはいえず、やはりヨット乞食でした。

さて、先週のバー浜です。

ハギがチュッチュしています。愛情なのか、憎悪なのか表情だけではわからないですね。

三角大岩手前のコケギンポ。

たまに穴から出てきます。ごちそうが見えたのでしょう。

ウミテング。ちょっと精悍になってきました。

三角大岩の隙間にマツカサウオ幼魚。

これはオニオコゼでしょうか。唐揚げが激うまですが、背びれに猛毒が。

ミジンベニハゼ、健在です。

アミメハギ。居る場所によっては地味ですね。

モイカ。相変わらず、威嚇してきます。ラビリンスの下。

えーい!


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